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新型コロナワクチンの子どもたちへの適応について


 最近12歳前後のお子さんをお持ちのお父様お母様方に、『コロナワクチンを打つことの是非について』の質問を何度も何度も受けました。

まず、12歳から15歳の年齢の人たちに、コロナワクチンを打つか否かについては、10年以上かけて積み重ねられたエビデンスが存在しないために、世界的なゴールドスタンダードが存在しないという事実について考える必要があると思います。


 まず世界各国の現在の状況について、見てみましょう。デンマーク、スペインでは12歳以上のすべてのこどもたちに、少なくとも1回以上のワクチン接種が行われています。フランスでも、6割以上の子供たちが1回目の接種を完了しています。スウェーデンでは、12歳から15歳のこどもたちは、肺疾患・重度の喘息・高リスク疾患の場合のみワクチン接種を行う事となっています。イギリスでは、12歳から15歳のこどもには、ファイザー製のワクチンを1回接種すること、とする決定をくだしました。心筋炎のリスクを回避するために1回接種に限る、としたところが、他の欧米諸国とは異なるところです。


また、ワクチン接種を義務化した国もあります。州によりますが、アメリカ・カナダでは、12歳以上では、学校で教育を受ける生徒は接種を義務づけるという決定を下しました。


こうしてみると、スウェーデンを除く国は接種する方向に政策決定したことが見てとれます。


確かに、感染を未然に防ぐという公衆衛生学的観点からは、すべての年齢層にワクチン接種を進めることが理に叶っています。しかし、個人という観点から物事を見た時には、ワクチン接種の是非というのは、その人にとってどれほどのメリットがあるかという点から見なくてはいけません。つまり、『コロナワクチンにかからない。後遺症が減る。重症化しない』という観点と、『副反応がどの程度あるのか』という観点との天秤です。


 臨床現場で見ていて、コロナウィルス罹患による後遺症として小さなこどもから中学生くらいの子でも、味覚障害・嗅覚障害はよく見かけました。成人よりは早く回復するという印象ですが、数週間から数ヶ月持続することもあります。しかし、重症化という観点には疑問が残ります。現在の時点で、成人と比べた際に、そこまでひどい重症化は起こらず、入院率も低いというのが実際のところです。対してコロナワクチンを接種したことによる若年性の心筋炎のリスクは0.005%と低いですが、存在します。スウェーデンでは、30歳以下のモデルナ製ワクチンの接種は2021年の10月に、心筋炎のリスクを鑑みて中止となりました。


 小児科医にとって、今までワクチンというのはあくまで、こどもたちの疾患の重症化を防ぐという目的に叶ったものだけが選択されていたというのが原則だという認識でした。


 コロナワクチンに限っては、リスクを伴っても、現在の時点では重症化がそれほどない年齢のこどもたちにも、社会的、公衆衛生学的な側面から接種が選択されているというのが現状だと思います。 

   

 現在、5歳から12歳のこどもたちへのコロナワクチンの治験が行われ、接種が検討されています。接種の是非については、量の調整も含め、12歳以上のこどもたち以上に慎重に考えられるべきだと思います。コロナウィルスにこの年齢層のこどもたちが罹患した場合の重症度、接種するメリット・デメリットをよく議論すべきです。健康なこどもに大きな副反応が出てしまった時には、禍根を残してしまうというリスクも存在します。

これらの問題全てについて、いずれ、時代が答えを出してくれる日が来ることでしょう。


近い将来にこどもたちについて決定されることが、よく考慮し、考え抜かれた結論・決定であって欲しいと切に願います。



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