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小児アデノイド肥大による影響と「手術する?しない?」のやさしい道しるべ

  • kinokids7511
  • 16 時間前
  • 読了時間: 4分

内視鏡を導入して、アデノイドの子が思ったより多いことに驚きました。

いびきが大きい・口を開けている・いつも口が開いている・かたいものがのみ込みにくそう――これらがアデノイドを疑うサインです。

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アデノイドとは?


アデノイドとは鼻腔奥にあるリンパ組織のかたまりです。体内に侵入した細菌から体を守る役割があります。しかし、アデノイドが大きく肥大してしまうと鼻の奥が狭くなり、いびきや口呼吸、睡眠時の無呼吸などがおきやすくなります。こうした睡眠の質の低下が、日中の眠気、集中力の低下などにつながります。また、のみ込みにくさといった症状も出てしまうのです。アデノイドや扁桃を切除するとのみ込みにくさや睡眠の指標が改善するという報告は少なくありません。



アデノイド顔貌について


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もう一つ大事な視点が、あごの成長です。鼻づまりで口呼吸が続くと舌は下がりがちになり、下あごは後ろ・下方向へ位置しやすくなります。これが成長期に持続してしまうと、顔が縦に長く見える、上あごが狭い、前歯が出やすい、下あごが小さく(後ろに)見えるといったいわゆる「アデノイド顔貌」と呼ばれる傾向が現れやすくなります。もちろん個人差は大きいのですが、鼻呼吸へ戻すことが早いほど、この不利な成長の進行を抑えやすいことが示されています。






方針を決めるための第一歩


方針を決めるためには”重症度の見える化”が大切になってきます。当院では、必要に応じて内視鏡でのアデノイドの状態を確認したり、一晩かけておこなう無呼吸のモニターによる評価を行うことができます。小児の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)があるかどうかは、アデノイドの手術適応の判断材料として最も信頼される検査です。手術(アデノイド切除や扁桃摘出も一緒に行う)を考える場合は、おおむねはっきりとしています。も呼吸モニターで中等度~重症の無呼吸が確認できる。睡眠・学習障害、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返しており薬物療法での効果が乏しいなどといった条件がそろえば、手術が第一選択として考えられます。もっとも、手術は万能薬ではありません。肥満やアレルギー性鼻炎などの基礎疾患があるこどもでは術後にも無呼吸が残る割合が一定程度あり、報告によっては幅はありますが約2割~4割というデータもあります。術後のフォローと追加治療の選択肢を見据えておくことが大切です。

一方で、手術を急がないでよいケースもあります。症状が軽く日常生活への影響が少ない場合、風邪や季節の変動で悪化・寛解を繰り返す段階、家庭でのケア(寝姿勢の工夫、鼻腔洗浄、アレルギー対策など)で十分にコントロールできる場合には手術を待ってみることも多いです。アデノイドは6歳以降、相対的に増殖が抑えられ、思春期に向けて自然に小さくなっていく傾向があるため、年齢の推移も判断の材料になります。ステロイドの点鼻や抗アレルギー薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト)などの薬での治療によって、小児無呼吸でAHI(睡眠時無呼吸指数)の低下があったという報告もあります。鼻の通りと睡眠の質の土台を底上げできれば、手術を回避することもできることが多いです。


当院でできるアレルギー性鼻炎の治療


アレルギー性鼻炎を合併する子においてアレルゲン免疫療法は、アデノイドの縮小や術後再肥大の抑制がみられたという報告があります。たとえば、アレルギー性鼻炎+アデノイド肥大の小児で、術後再発のリスクが低下したということが2024年に発表されています。また、アレルギー免疫療法でアデノイドの縮小が確認され、手術の代替えとなりえたとする研究もあります。いずれも効果に個人差があるため、アレルギー診療とアデノイドをよく観察しながら、期待できる現実的なゴールを目指すことが大切です。

当院では、スギアレルギー・ダニアレルギーといったアレルギーを持つ患者様に対して、舌下療法やアレルゲンを含む薬液を注射で皮下に投与する皮下免疫療法などをおこなっています。また、一度の採血で41項目のアレルゲンを調べられるアレルギー検査機器を活用し、より正確な診断と患者様ひとりひとりにあわせた治療を行っています。


受診の目安としては、週に何度もいびきが続く、睡眠中に呼吸が止まる・あえぐような音がする、朝すっきり起きられない、日中のぼんやりや多動が気になる、かたいものでむせやすい・のみ込みがぎこちない、普段から口呼吸や鼻声が目立つ、こうしたサインが複数当てはまる時です。

「重度化の見える化」が道しるべになり、中等症~重症の無呼吸があるなら手術が第一選択になりやすい一方、軽症では手術をせずに成長を待って上手に治すというものが現実的な道かなと思います。点鼻ステロイドや内服薬、アレルギー免疫療法を適切に組み合わせることで、睡眠などの質を向上させながら、あごの成長にも良い影響を期待できます。

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